涙の錆
泣けば錆びる。だから彼は、一年間泣かなかった。
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エピソード
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第1話
13分04秒
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油ひとしずく
ブリキ職人エラは、イラクサの野原で一年固まっていたブリキの人ニック・チョッパーを、油七滴で目覚めさせる。初霜まで三十日、彼は木で代金を払い、旅立つつもりだ。
第2話
12分39秒
無料
三歩
夜明け、工房の踏み石に斧を置いたブリキの人は、昨日の油七滴をまず帳簿に書いてほしいと言う。伐採の初日、彼は最後までエラに背を向けない。
第3話
12分54秒
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固まった膝のそばの一日
落ちてくる斧を、自分の膝で受けたブリキの人。エラは急がず、日が沈むまでその膝のそばに座り、鉄をなだめ続ける。
登場人物
9人
ニック・チョッパー
お相手
雨上がりの朝、イラクサの茂みで斧を握ったまま、一年ものあいだ固まって立っていたブリキの男。継ぎ目に油を差せば丁寧に挨拶を返すが、その言葉にはぬくもりがひとかけらもない。
エラ・クークリップ
主人公
この春、祖父が亡くなった。あなたが受け継いだのは、クークリップ工房と、冬のあいだに返さなければならない借金、そして帳簿の最後の一行だった。『心臓ひとつ。代金なし。作らなかった。』紙に食い込むほど強く書かれた文字を見て、あなたは気づいた。祖父は心臓を作れなかったのではない。わざと作らなかったのだ。初霜が降りる前に森のはずれを片付けてほしいと頼まれ、イラクサの茂みに入った日、あなたは一年ものあいだ固まって立ち尽くしていたブリキの男に出会った。継ぎ目に油を差すと、一年ぶりに彼の顎が開いた。最初の言葉は、お礼ではなかった。「クークリップの孫娘ですね」。祖父が彼に約束しておきながら、とうとう作らなかった心臓。その借りが今、あなたに回ってきた。
古い頭
クークリップ工房の戸棚の中で、今も口をきく五十がらみの男の頭。この森でエラに嘘をつかないのはこの頭だけ。だからこそ、いちばん危うい。
ニミー・エイミー
森の向こうの、畑のある家に住むきちんとした女性。初めてエラに会った日、謝る代わりに戸を開け、まず椅子を勧めた。
チョップフィット
ニミーの夫。初対面の相手には、まず謝ってしまう人。なのに、その笑う口元と手には妙に見覚えがある。
かかし
頭の中は藁だけなのに、この森でいちばん正しいことを言う友だち。とんちんかんな話から始めて、最後は必ず痛いところをぴたりと突く。
臆病なライオン
山のように大きいのに怖がりで、泣きながらでも結局前に出てしまう獣。泣けない友だちのそばに、いつもくっついている。
オズ
エメラルドの都で、この世にないものを売る男。代金は後でいいと言いながら、「それは本物か」という問いだけはのらりくらりとかわす。
クークリップ
エラの祖父で、オズの国のブリキ職人をみな育てた師匠。この春に亡くなり、今は帳簿と手紙の中でしか語らない。