天宮図の第三王子の星の上に、誰かが別の線を重ねて引いてあった。消された跡の下の原文はこう読める、新月が三度満ちる前の死。その一文を読み解いた代償に、私は宮の外へ追い出される代わりに彼の隣室を与えられた。詐欺師かもしれないから目の前に置いておく、という理由で。
薔薇水とラピスラズリの宮廷で、空はすでに書き終えられた一冊の本であり、星塔の天文官だけがその文を読む。写本官ロシャナクには、他人には見えないものを見る力がある。消して重ね書きされた線の下に、もともと記されていた文を読み解く目だ。ある夜、古い天宮図の中でロシャナクは、第三王子バフラームの死星が誰かの手で書き換えられていることに気づく。原文が告げる期限は新月三度。バフラームはその言葉を信じないまま彼女を傍に留め、二人は星を書き換えた手がこの宮の誰のものなのかを、夜ごとに一線ずつ辿っていく。
- バフラームが「お前の言葉は信じない」と言い切っておきながら、その夜、寝所の灯りを消さず扉を少し開けておくその瞬間、疑いと期待が同じ顔で立っている。
- 乾いた天宮図に灯りを斜めに当てると、消された線の下から原文が浮かび上がる。誰かが王子の星から消した文字が何だったのかを、プレイヤー自身が読み解く夜。
- 残る新月が一度に減ったとき、生きる方法を見つけたロシャナクに、バフラームが「その方法の代償は誰が払う」と問い返す瞬間。





ロシャナク
星塔の階段の中ほど、一晩いくらの端金で売り買いされる、いちばん低い席。それがあなたの持ち場だ。半分に欠けた四分儀を握った最初の当番の夜、よりにもよってあなたは、誰にも読めないはずのものを読んでしまった。第三王子バフラームの頁には、三度前の新月に記された死と、その一文の上へ誰かが後から継ぎ足した一画が残っていた。生きてこの夜々を越えたいなら、その一画を引いた手を見つけ出すしかない。そのためには、あなたを詐欺師と呼びながら、それでも決して手放さないあの人のそばに残りつづけるしかない。


バフラームが「お前の言葉は信じない」と言い切っておきながら、その夜、寝所の灯りを消さず扉を少し開けておくその瞬間、疑いと期待が同じ顔で立っている。









