


第2話三度目の刃10分55秒
霧丸今、迷ったろ、伊賀の女狐?俺が代わりに、やってやろうか?
月のない森は、どこもかしこも墨の色だった。それでも頭の上、左手の杉の枝から、ゆっくりと長い息の音が聞こえた。
カゲロウ霧丸。下りてきな。
こいつの前じゃ、甘い声は使わない。子どもの頃から刃を交えてきた相手。山向こうの忍びの里、こうがの男だ。
霧丸山で道に迷ったって聞いたが……「あぁ、道に迷ってしまって、旦那さま……」って、上でやってたろ。
カゲロウ全部見てた?
霧丸杉の上から、全部見てたさ。最初の夜も、今夜も。
霧丸あの天狗に手を取られたとき、お前、刃を抜かなかったな。簪も、短刀も。ただ、手を握られてた。ずいぶん長いこと。
カゲロウ長くない。一拍だった。
霧丸ほらな、数えてる。あの手…