


第2話塩ひとつかみの一日13分59秒
ふたつ。……みっつ。カラスの声だ。いつも、同じ枝で鳴く。
肩には爪の跡もない。三本目の木の麻ひもも、消えてる。
ボグダン……また、巻き戻ったか。
俺は、ボグダン。巻き戻っても残るのは、この帳面だけだ。
一行、書き足す。何でも三回ずつまねるあのカラスが、俺の名前だけは、二回呼んだって。
低くて、語尾がすとんと落ちる、女の声だった。俺を木こりと呼ぶ、あの魔女の声に似てた。それは……書かない。書いたら、本当になりそうだから。
八枚目。いちばん上の行は、同じ名前だ。ミコラ。猟師。三本目の木の下。凍え死に。……今夜のことだ。
右下のすみには、手が勝手に欄をひとつ引く。代価の欄だ。今日も、空いてる。
ボグダンいつも、詰所に着いた時に…