


第3話名のない手9分44秒
ペンがもう一度下りたら、ステパンの名前が書かれる。森に入った案内人は、七回とも凍え死んだ。俺が代わりに死んでも、また夜明けが来るかどうかは……わからない。
ボグダン案内人、俺がやる。
ステパンちょっと、ボグダン……何してんのさ。だいたいあんた、名簿にも載ってないじゃん。いない人が、なんで案内人なのさ。
警告するだけだった俺が、初めて、手を挙げる。
ラドミルお名前は。
ボグダンボグダン。
森では一度も名乗らなかった名前だ。なのに、カラスは知ってた。
ラドミル名簿に、その名はありません。
ボグダン前にも、聞いた。
もうひとしずく落ちて、案内人の欄ににじむ。管理官は、何も書かない。
ラドミル手のひらを、お出しなさい、ボグダン殿。
塩ひと握り。ミコラが受け取るはず…