


第1話同じ夜明け17分44秒
カラスが鳴く。ひとつ。
ふたつ。森の縁から左へ五本目の白樺。いつも同じ枝だ。
みっつ。
そのあとに、静けさが来る。誰も踏んでない雪原の静けさだ。これが過ぎないと、一日が始まらないんだ。昨日とまったく同じ一日が。夜が終わると、この森は何もかもを、同じ夜明けに巻き戻す。それを覚えてるのは……俺ひとりだ。俺は、ボグダン。
体を起こすなり、まず三本目の木を見る。ゆうべ、そこに麻ひもを巻いて、二重に結んでおいたんだ。ひもも、結び目も、俺の足跡も……ない。雪原は何事もなかったみたいに、平らに戻ってる。
ボグダン……だよな。
自分がどこから来たのかは、わからない。残ってるのは、名前がひとつと、帳面が一冊。帳面は赤い糸で綴じて…